五葉光バトル説法生きてみんかい! 17
餓鬼と言えば、一般には「ガキっぽい」とか「クソガキ」とか使われておるが、
これはもともと仏教の言葉なんじゃ。
それでは餓鬼とは何かと言えば、お寺で地獄絵を見た奴もいるかと思うが、
あばらが洗濯板みたいに浮き出て、手足はガリガリにやせ細り、
どう言うわけかお腹だけは異様にふくれ、
フンドシ一丁で目をギラギラさせながら食べ物を求めてさまよう姿である。
そして食物をとろうと手を伸ばすと、
その食物や水はたちまち炎となってしまい何も食べる事ができない。
周りには食べ物が一杯ある、食べたくて仕方がないのに
どうしても食べる事ができずに、その苦しみが際限なく続くのが餓鬼の世界だ。
ちなみに、この餓鬼の餓の字は食べる偏に我と書く、
つまり「自分が食べたい」という意味から来ておるそうな。
要するに、「自分さえよければ、他人の事はどうでもええ」
と言う欲深い人が墜ちる世界なのだ。
こう言うと「それは死んでからの話だ。俺には関係ねえ」と思うかも知れんが、
本当の餓鬼は、ワシらの心の中に住んでいるんじゃ。
ワシらは、お互いにお金やモノをいくらか持っておる。
少ししか持っていない奴は、「少ししか持っていないからいっぱい欲しい」。
多く持っている奴は、「多く持っているから更に増やしたい」と、
たくさん手に入れたら今より幸福になれると考えて
「もっともっと」という事に一生懸命だ。
その「欲しい欲しい」と言う心の渇きを覚えた時、人は餓鬼と変身するのだ。
身近なところで言うと、最近若者を中心にナイキのエアーマックスと言う
スポーツシューズが大変人気があるが、
この靴が店頭で数万円もするという事もあって、なかなか手に入れにくい。
そこで、その靴を履いている人を路上で襲って無理矢理奪い取ってしまう。
これはナイキ餓鬼だ。
また昨年は、厚生省の不祥事があった。
老人福祉に名を借りて、福祉のためについた補助金をかすめ取ってしまう。
その上、それがばれて辞職した後も、国民の反感をよそに、
ボーナスと退職金はしっかり受け取ると言う厚かましい態度。
己の欲望のために、平気で国の税金でもって私腹を肥やす・・・・
厚生省餓鬼である。しかもそれを起こしたものが、
東大を出て、いわゆる一流と呼ばれる人なんだから、
あきれてものも言えん。
やっぱり、一流とは一つの流れにしか過ぎんと言う事か。
なかなか学歴と人格は一致せんもんだのう、ワッハッハッハ。
だがワシらはそれらの事件を絵空事だと考えてはいけない。
実は、ワシらの姿をそのまま映した鏡なのかも知れんのじゃ。
早い話が例えば、半年分の給料をつぎこんで、やっと手にした新型のバイクが、
ほんのちょっとしてるうちにモデルチェンジした。
で、それをバイク仲間があっさり買いやがった。
すると、それが羨ましくなって、また無理してでも買うというように、
周囲に踊らされ、ほんの少し乗っただけで次々に買い換えて、
気が付いてみるとローンの山だけが残っている、
これでは何をやっとるのかわからん。これこそがバイク餓鬼じゃ。
さて、禅に「足を知る」という教えがある。
端的に言うと「すでに持っているモノの中に価値とか喜びを見いだせ」
という意味じゃ。
しかし、誤解しないでもらいたいのは、これは決して
「欲は捨てろ、モノが少々不足気味でもガマンせい」
と言ってるわけではないんじゃ。
本来、欲自体は決して悪いものではないのだ。
食欲がなかったら大変だ、お腹がすいて力が出ない。
性欲がなかったら、人類は滅亡してしまう。
お父さんの労働意欲がなかったら家庭は崩壊してしまう。
それではなにがいけないのかと言えば、
過ぎた欲がいけないのだ。
インドの昔話にこんなのがある。
牛を九十九頭も飼っている金持ちがいた。
ところが、何とかもう一頭手に入れて百頭にしたい。
そこで牛を一頭しか飼っていない貧乏な友人から牛をだまし取ろうと考えた。
そこで、金持ちはわざと粗末な身なりをして友人を尋ねて、
「実は悪い奴にだまされて無一文になっちまった。そこで死のうと思ったのだが、
せめて死ぬ前に君にお別れを言いたくて・・・・」
すると。その友人は「君が助かるのなら、この牛をあげるよ」
と一頭しかいない牛を金持ちにやった。
金持ちは、喜んでその牛を連れて帰った、という話だ。
ただ、この話は最後に恐ろしいオチがついている。
「ところであなたは、金持ちの男と貧乏な友人のどちらが幸せだと思う?」と。
金持ちの男は、「しめしめ、うまくやった」と思うだろうが、
それは決して長続きはせん。しばらくすれば、
「百の次は百二十。それには二十足りない。ああ、足りない。足りない」
といい続けるじゃろう。例え、百二十頭になっても、
次は「百五十、それには三十頭不足、不足だ、不足だ」
と言っているうちに年を取って死んでしまうのだ。
不足感の中で死んで行くのは、どう見ても幸福とは言えん。
相対的に数は多くて豊かだのに、心が貧しいなんて、そのまま餓鬼の世界じゃ。
どうだ恐ろしい話じゃろう。
お前も、不平不満の心で「苦しい、苦しい」とグチばかりこぼしとらんと、
足るを知るの精神で楽しく生きてみんかい!
喝!!