HONDA V-TWIN MAGNA &
YAMAHA Drag Star250 &
Kawasaki ELIMINATOR250V

 

 昔、アメリカの片田舎でヤンキーのバイク好きたちと話をしてしるときに、
「そう言えば、俺の国にはな、クォーターで4気筒のバイクがあるんだぜ」
と言ったら、目を剥いて驚かれたことがある。
僅か250ccで4気筒 !
それじゃあまるで時計のような細工をしたエンジンではないか!
と仰天していた。
だが、実はそれよりもっと驚かれたことがある。
「やはりクォーターでな、 Vツインのエンジンを搭載したやつもあるんだぜ」
「なんだと? なんだとぅ? それは本当の話なのか!?」

 彼の国を象徴するようなVツイン。
言わずもがな、それはハーレーダビッドソンである。
・・・その5分の1! なにぃ、5分の1の、250ccのVツインだとう!?
「ショーモデルか」
「いや」
「ショップのワンオフ物か」
「いや。ふつうの市販車としてカタログモデルにあるものだ」
「どういうことだそれは」
「どうもこうもねぇよ。オレの国じゃあ、ふつうのことだよ」
「オーマイガァ〜!」
最低でも500ccあたりから始まる国。
250ccなどといったら
オフロードバイクぐらいしか特に存在する理由のない国だ。
需要がないから供給しない。
供給しないのだから雑誌への掲載もない。
したがってほとんどの人間は250Vツインの存在を知らない。

どんな音がするのだ!
どんな乗り心地なのだ!
走った感じはどうなのだ!
とオレは質問攻めにあった。
「なんたって安いしよう、くそコンパクトだから、
トーキョーとかヨコハマシティの、
ロスよか100倍混んでいる狭い道を走り回るには、絶好だぜ」
「それだけじゃねぇさ。
1ガロン(米ガロンは約3.8P)もガスがありゃあ、
ブチ回して75マイルで走り続けたって60マイル以上は楽勝に走るんだぜ!」
「だからよう、オレの国じゃあ、そいつらに乗ってハコネ
---知ってっか? マルホランドなんて目じゃねぇワインディングだぜ---
なんかにリング行く奴らも多いんだぜ」


 ぜ! ぜ! ぜ! とオレは大型バイクについて語るときよりも、
数段得意になって解説した。
「ホホーッ! ニッポン、ジャパンってのは、
やっぱバイク作りに関しちゃ、とんでもねぇ国だな!」  

 そう、オレたちが当たり前の事と受け止めているこの事実は、
実は世界のバイク乗りからしてみれば、とんでもないことだったりするのである。
今回はそんな250Vツインを搭載する、アメリカンタイプ3台のストアタだ。
(本来ならばイントルーダーもここに加えるべきなのだが、
どうしても広報車の都合がつかなかった、という事情をここで述べておこう)

 

 それにしても、こうやって乗り比べてみるというのは本当に面白い。
どれもそれぞれ思いきり特徴があるというか、個性が丸出しなのだ。
今回は台数が多いので
『各車の最も特徴的、個性的』 だと思われる部分について、
絞り込んで書いて行こう。

 まず、いかにアメリカンモデル然としたスタイルをしている、
ドラスタからだ。
コイツの最大の特徴は、他の2台に比べて「圧倒的」と表していいほど
軽いということだ。
なにしろ、マグナとエリミが共に(乾燥・以下同)171kgもあるのに対し、
コイツは147kgと、なんと24kgも軽量なのである。
24kgといえばリッタークラスのバイクでも相当な違いが出るというのに、
それがこのクラスでなのだから、影響の程は推して知るべし。
移動させようとして押した瞬間、
見た目の立派さとは辻褄が合わないほど軽くスッと動いてしまうので
きっと驚くことだろう。
 また車体寸法の基準となるホイールベースも、
マグナとエリミが(これもまた) 共に1620mmなのに対し、
コイツは1530mmと俄然短いのだ。
 まだある。
シート高も(またまただ!)マグナとエミリが共に690mmなのに対し、
コイツは670mmと、30mmも低いのである。

 つまりマグナとエミリが意図的に車体を大きく立派に見せようと作っている? 
のに対し、コイツは250は250という、まんまそのサイズで
仕上げられているのだ。
 さらにハンドリングもコイツが一番軽い
(なんの抵抗もなくパワステのように軽く切れる)
ので渋滞路の走行もバッチリだ・・・と言いたいところなのだが、
ハンドルの幅が最もある
(マグナ880mm、エリミ775mmに対してコイツは915mmもある!)
ので、スリ抜け時には意外と気を使ってしまう。
 ついでに書いておくと、エンジンのパワー感もコイツが最も無い。
フカァ〜とした感じで回り、パンチのパの字もない。
そして高回転域では振動も3車中最も多く出る。

 次はエリミに行こう。
コイツの最大の特徴は、この3車中ではダントツでエンジンに
パワーがあるということだ。
ドラスタは23馬力、マグナは27馬力。
それに対してコイツだけ35馬力と、ズ抜けてあるのだ。
ドラスタとマグナの差はそう感じられないが、
コイツだけは乗り換えるとすぐに「おおっ!」とハッキリと分かるほど
パンチの差が感じられる。

 具体的に例を挙げるならば、3台で横並びになりローでトロトロと走り
(クラッチミートのタイミングによる加速差をなくすためだ) 、
いっせーの、せ! でガバッと全開加速させてやると、
ドラスタはマグナにスッと前へ出られて3〜4車身差を着けられたままとなり、
エリミはそのマグナを最初からブッチ切った状態で、
ひとりだけグングン先へ行ってしまう・・・という結果となる。
最高速もコイツだけは平気で140km/hあたりまで伸びるが、
後の2台はそれぞれ5km/hほどずつ適わない。
 ちなみに、ドラスタとマグナが5速なのに対し、
コイツは6速あるので、ただでさえ優位すぎるくらいある力を、
さらに有効に引き出せていることになるのである。

・・・という具合にだ、
コイツはとにかく真っすぐブッ飛ばすにはもってこいだし、
車体の作りもそれに見合うよう直進安定性を重視されているのであるが、
その代償として? 
渋滞路のクランク切り返し走行ではちょっとした不意打ちを食らう。
ハンドリングそのものがかなり重めなのに加え、
切り込んで行けば行くほど勝手に強く切れ込もうとするクセを持っているので、
ロック近くまで切ったときなど内側の手でかなり突っ張ってやらないと、
同じ舵角を保てなくなってしまう→往々にして予想以上に小回りしてしまう
→予定とちがうぞと、ちょっとびっくりするというわけだ。

 では、マグナだ。
最後に持って来たのは理由がある。
早い話「コイツはドラスタとエリミの中間にある」と書いておけば、
それでほとんどの部分の話は済んでしまう、
というような感じのバイクだからである。
 では、特徴はないのか?
いや特徴はちゃんとある。それはエンジンの鼓動感だ。
 他の2台は「並列2気筒だ」と言われても分からないかも知れないが、
コイツだけは、ちゃんとVツインの感じがするのである。
 もちろん、排気量が排気量だし、
設計段階から振動など発生させないよう工夫するのが当然であるからして、
ハーレーのアレのようではまったくない。
それは主に2本出しとなっているマフラーから
吐き出される音によって与えられるものだ。
ボボッ、ボボッというパルス感の伴った、
Vツインとして納得出来る音をコイツだけは吐き出すのである。

 だから、ドラスタよりも大柄で重く、
またエリミのようにもガッとは走らないが、
(このVツインの乗り味も含めて)何が「一番Vらしいか」と問われれば、
コイツということになるだろう。
 このように、良くも悪くもいかにも「ホンダっぽいポジション」にいる
バイクではないだろうかと思うのであるが、
この話は燃費の問題にも結び付いている。
 今回はこの乗り味・動力性能の差が、
燃費にどのように反映されるのだろうか
(ドラスタはいかにも食わない印象で、エリミはまったくその逆=
自動的にマグナは中間に位置するだろうと予想を立てていた)
と強い興味が湧いたため、撮影後3台でおよそ370kmほどの距離の
テストツーリングを行ってみたのであるが、
この読みはおもしろいように的中していた。
 以下はまず、一般路を法定速度で流した場合だ。

 ドラスタ38.2km/P。
 マグナ30.9km/P。
 エリミ30.7km/P。

 ところがだ。これが100km/h+αという、
この3車にとっては常に全力の大半を使うような状態となる、
高速道路の部分ではこうなる。

 ドラスタ29.2km/P。
 マグナ32.0km/P。
 エリミ21.7km/P。

 パワーがないからブン回し気味になるドラスタ
(オレが乗っていて相当飛ばした)と、
逆に高出力のエリミ(飛ばさない性格の弟が乗っていた)は、
ここで大食いをし始めるのだ。
そしてそれらを均した平均値は、次のようになる。

 ドラスタ33.7km/P。
 マグナ31.5km/P。
 エリミ26.2km/P。

 やはり平均を取ると、ホンダは真ん中に来ることとなるのである。
 基本的に、乗り手を限定するようなことや、
どこかが突出したようには作らない、
といういかにもホンダらしい車両の作り方が、
こんなところにも現れたのではないだろうかとオレは思う。

 エリミのみは冒頭の「ブチ回しても1ガロンで」の数字には
些か届かなかったものの、他の2台は余裕で到達している。
やはり250は、サイフに優しい排気量だ

 では総括と行こう。
 ドラスタ。押しても、引いても切っても、
とにかく、何をしても「軽い」のがコイツだ。
それは超低いシートと相まって、
多少の坂でも乗ったままの状態で足で押し戻せてしまうほど。
何も考えずに気軽に乗れるという面では、
TWをも遥かに凌ぐと言っても良いだろう。
 逆に、少しクセはあったとしても、ブン回すと燃費が悪化する、
でもとにかく少しでも速いほうがいい、という人にならば、
これはもうエリミしかないだろう。
パワーの差は圧倒的だ。
走りの面ではコイツだけアメリカンタイプというよりも、
ロードスポーツのそれを手に入れていると言える。
 そして、そのどっちの良いとこも少しずつ欲しい、
あるいはVツインに乗るのだから、
それに乗っているという証しのようなものが欲しい・・・という人であるならば、
これはやはり、マグナしかないだろうという結論に達する。

 ちなみに今回の長距離アフターテストは、
オレと、弟と、中川マユミとの3人でやったのだが、
頻繁に乗り換え、最後に各々どれが一番気に入ったかとやったら
(ためらいなく一斉に!)
オレがドラスタ、弟がエリミ、マユミがマグナをパッと指さしたのには
笑ってしまった。
オレはあまりに乗り易いのでドラスタが気に入ったのだが、
予想ではマユミもドラスタ、弟は(乗る前の色々な本人の思い入れから)
てっきりマグナを気に入ると思っていたのだったが、
各車走りや操縦性がちがうのと同じく、
人のほうもまた「良い」と感じる感覚というか、
「自分が気に入った部分」というものは、
こんなにもちがうものなのだな、と改めて思わされた部分であった。

 冒頭の、件のアメリカ人は最後にこんなことを言っていた。
「ちっこいのしか無かったら、それはイヤだけどよう。
でもでけえのもあって、ちっこいのもあるってわけだろう?
よりどりみどりというわけじゃねぇか。まったく大した国だぜ!」

 今ではそれは、世界最大となる1800ccもあるVツインから始まり・・・
そう、まさしく、よりどりみどり!
 その中で「自分の使い方なら250で十分だ」と思うならば、
そいつを選択できるという幸せ。
オレは胸を張って言う。
「1800が最高であるならば、250だって最高なのだ!」
 実際、400だと急にでかくて重くなる。
だからオレなら250を選ぶだろう。

 どうだアメリカ人。うらやましいだろう、オレの国、日本が!

 


キャプション
メーター
基本コンセプトが似ているマグナとエリミは、この辺りの処理までも同じというのがおもしろい。
完全なアメリカンモデル? であるドラスタは、独立したタンクキャップで個性を主張する。

エンジン(エリミ)
見た目はアメリカンだが、肝っ玉はロードモデル。いかにもカワサキ流の味付けだ。
こうでなきゃ納得できないユーザーが多いのだろうね、カワサキ乗りは!

エンジン(ドラスタ)
ほんとうに「フカァ〜」と手応えなく回るエンジンはパワー感を感じられないが、
「250だから」と割り切れる人は「それがどうしたの?」と思うだろう。

エンジン(マグナ)
特徴は「音」それのみ。可もなく不可もなくの見本。いかにもホンダのエンジンだ。
どう扱おうと燃費に大きな差がでないところもその部分を良く現している。

マフラー(マグナ)
いかにもVツイン、というサウンドを出してくれる2本出しのショートマフラー。
ドラスタも2本出しだが、コイツのような音は出さない。
静か、かつ「納得の音」を出すというのは、とてつもない技術が必要なんだぞ。

ステップ(ドラスタ)
ブン回すと3車中最も微震動の出るドラスタは、その対策として
「足をグッと突っ張ると1cmぐらい向こうへ動く」ほどの、
えっと思うぐらいの完全なラバーマウントのステップを採用している。
しかし、そんなに動くのに「言われないと気が付かない」というのが人間面白い。

リアタイヤ(エリミ)
160というリヤタイヤのサイズは、マグナよりも僅か1cm大きいだけであるが、
この車体の大きさからすると「超極太」に見えてしまう。
だが、太くてもそれによる悪影響はまったくなし。
このあたりは「メーカーゆえにできるマジック」のひとつだ。


                    MB 2002.2月号